を走らせていた時、右側の木立の下が、黄色いじゅうたんを敷き詰めたように
なっていた。車を止めて近寄ってみると、ヒガンバナのようだ。久米島のヒガ
ンバナは、黄色なのかと驚いた。あとで聞くと、それがショーキズイセンで
あった。毎年、10月の盛りの時期を心待ちにし、このみごとな風景を写真に
撮ったり絵に描いたりして楽しんでいた。
今年は、また驚かされた。道と群落との間に一本のロープが張られていたの
だ。無断伐採・採取を禁止するという内容の強い口調で書かれた看板も何カ所
かに立てられ、景色を分断していた。今年は、よほどひどく踏み荒らされたの
か、それともひどい盗伐があったのだろうか。
ここのショーキズイセンは、自然発生したものではなく、人工的に植栽され
たものと聞く。しかし、それがヒカンサクラの木々の間に、勝手に広がって咲
いているようで、まるで自生したように見える、それがいいと思っていた。人
界と植物界が一体化しているようで、とても自然に思われた。
ロープで切り分けられた風景は無粋で、どうも写真にならない。いい写真を
撮ろうとしたら、どうしてもロープ内に入りたくなる。そんな時のロープの意
味はなんなのだろう。念のため、予防のためだとしたら、「人を見たら泥棒と
思え」と言われているようで、とても寂しい。昨年までも時々、写真を撮る人
が、群落の中に入っているのを見かけたことがあるが、咲いている花やこれか
ら出ようとしている芽を踏まないように、注意深く動いていたように思う。花
の1本や2本踏まれてもまた生えてくるさ、1本2本盗まれても、また植え
りゃあいいさという言い方をすると、大抵、「みんながそう思ってそうした
ら、絶滅してしまう。だから多くの人が楽しめるように、一定のルールを作る
のだ」という人が出てくる。それは、間違ってはいないと思う。たぶん、正し
い意見でしょう。
マ、いいか。久米島の人たちは大陸的で鷹揚な性格の人が多いから、ロープ
ぐらい張っても張らんでもどちらでもいいと言うことでしょう。
私は、ショーキズイセンとトラロープを見ながら、長田弘さんの詩の一行を
思い出した。
<ひとのいちばん大事なものは正しさではない>


