2005年11月23日

島地の森(3)

このダムの堰堤上の道を通り、突き当たったところに、小高い丘がある。その上には東屋があって、公園風になっている。偽木で作られた階段は急なうえ雑草で覆われていて、登るのに大変難儀するが、ここからの眺めも素晴らしい。

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この丘は、ダムをつくるとき出た土砂を積み重ねて人工的に作ったものだそうだ。なんの為に、こんな場所にお金をかけてどこも見えない展望台を作ったのかと、疑問の声も聞かれる。以前、私も、宇江城城跡に登って、足下に見える森の中の、赤い東屋の屋根を発見したとき、あそこへはどうやって行くのだろう、どんな景色が展開するのだろうと不思議に思ったりした。が、実際にここへ来てみると、この展望台を発案した人と、その計画を実施した人の深慮遠謀に脱帽する。

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 この展望台からは、背後にあるレーダードームと宇江城城址を別にすれば、この名無しの湖と島地の森しか見えないのだ!海に囲まれた久米島では、小高い丘に登れば、どんな場所からも海が見えるだろうと人は思うかも知れない。しかし、ここからは、海が見えないのだ。どこまでも続く緑の森に、ひっそりとたたずむ「名無しの湖」。北海道やカナダのような広大な地域でしか見ることのできない風景が、この狭い離島の中で演出されている。行政のやることはすごい。(たぶん、県や国の事業だからついでに乗せてしまえとか、予算が余ったので仕方なく作ったなどというのではないでしょう。)

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 やはり久米島は大陸なのだと実感(錯覚?)したとき、識名園の勧耕台を思い出した。琉球王朝時代、中国からの冊封使を識名園に案内して、高台からの風景を見せた。琉球をちっぽけな国と思っていた使いは、海がまったく見えない大陸のような光景を見せられたので、琉球も広大な国土を有していると思ったそうだ。今日のように精密な地図もなく、ましてや飛行機で上空から見るということもない時代のことだから、このようなたくらみが成功したのだろうと思うが、武力もなく資産も乏しい琉球という小さな国が、知恵によって大国と渡り合ってきたことのたとえに引き出される話だ。
 久米島も、金をかけてハコモノを作り観光客を誘致するのではなく、自然という資産や今ある建物を保持・活用するなど、「知恵」で勝負してみてはどうか。そうすれば、必要以上に、子や孫に借金を残さないですむと思う。この展望台も「観湖台」とでも名を付けてお披露目すれば、たちまち良い観光スポットになるだろう。この名もどこかにありそう。今は人が来ないので閑古鳥が鳴く、閑古台と呼ばれてしまうかもしれない。
 名前を付けること(ネーミング)と観光とは深い関係があるということを島の人たちはよーく知っているはず。「お化け坂」なんて、新しく作られた道の、なんということない坂だったものが、名前を付けたとたん、久米島の主要な観光地となり、わナンバーの車が押しかけるようになったではないか。(化かされた気がしないでもないけれどね。)
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2005年11月10日

島地の森(2)

「島地の森散歩道」のアスファルトの道を10数分歩くと、左側に湖が見えてくる。この湖には、名前がない。島の人たちは、「白瀬二号ダム」と呼び、地図にもそう書かれているが、ダムというのは、河川を堰き止めた堰堤、あるいはシステム全体をいうのであり、たまった水の部分は、ダム湖または「なになに湖」「なになに池」というのが普通だ。たとえば、久米島でいえば、タイ原池、ヤンガーイチ、フサキナ池、儀間池など。湖や池としての名前がなく、ダムとだけされているのは、このほか、白瀬一号ダム、それに最近完成したカンジンダムなどだけれど、この湖は、池というより、○○湖というにふさわしいくらいの風格と雰囲気を備えている。
 湖の一番のビューは、取水用のポンプ室と思われる建物がある場所から見る景色だ。広大な緑の森に囲まれて静かに眠る湖、深い山間にひっそりと静まりかえる湖、と見えなくもない。正面の山の上には、自衛隊のレーダードームが見え、その右手には、宇江城城址も見えるが、これもアクセントになって良い。風によって湖面が波立ち、空行く雲によってその色が移り変わる。音といえば、鳥のさえずりと蝉の鳴き声、そして、木の葉をゆらす風の息吹。ほかには、何も聞こえない。長い間見ていても飽きない風景だ。
 写真に撮ろうとすると、建物が邪魔になるけれど、作られた目的がダムなのだから文句は言えない。屋上を展望台にでもすれば、さらに広がりのある素晴らしい景色が展開するだろう。「望岳台」なんて名前をつけたりしてね(どこかに有りそうな名前だけれど)。
 最近のように降水量が少なくて干上がってしまい、湖でなくなることを見越して、名前を付けなかったわけではないと思うけれど、それにしても、これだけの観光スポットとなりうる場所に名前がないというのは可哀想。
だれかこの湖に素敵な名前を付けてあげてください。
(写真は、2004年6月に撮ったものです。)

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2005年11月02日

島地の森(1)

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 ダルマ山園地のはずれ、自衛隊基地へと続く道の右側に、「島地の森散歩道」と書かれた看板があって、右のアスファルトの道を少し入ったところにゲートがある。このゲートは通常は閉じられていて、入るときには、ゲートの両側から、多少の後ろめたさと、禁を破るある種の快感を重ねたなんともいえぬ気持ちですり抜けるのだけれど、最近は、なぜか開いている。もっとも、この道の手前の駐車場の奥からも入ることができるが。

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 ここには、かつて自然の森だったところを切り開いて作った遊歩道があるのだが、雑草が生い茂って元の状態にもどりつつある。よく見ると、草や枯葉の下には幅2mほど砂利が敷かれてあり、偽木で作った縁石も見つけることができる。蜘蛛の巣を払い、足で道を探り、雑草をかき分け、センダングサの種をズボンに付けながら、左に曲がって、数段の階段を下りて少し行くと、ゲートから続くアスファルト道に出る。より自然に近い状態で、森の散策を楽しめるように演出しているに違いない。行政もなかなかやるなあと思う。

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 「散歩道」であるのに、アスファルト舗装しているのは、ちょっといただけないが、私は、この道が好きだ。数年前、偶然ここに来たのだが、小規模な土木工事をしていた。何をしているのか見てみると、それまであったU字型側溝を、皿型側溝に付け替える工事をしていたのだ。森の小さな生物が側溝に落ちてもはい上がれるようにという配慮、これは、素晴らしい工事だと思った。このような皿型の側溝は、もう少し深みのあるものを北海道の公園の中の道で見たことがある。このように自然に配慮した道は、久米島では、ここだけだ。島中の幹線以外の道を、このように変えたなら、多くを語らずとも、島に住む人々の優しさを表現することができるのに。第一、不器用な私が、車を走らせるとき、草で覆われたU字側溝に車輪を落とさないようにと気を遣わずに済む。
両側から木々が生い茂り、緑のトンネルを造っているアスファルトの散歩道。本島北部、やんばるの森を思わせるこの道を、チョウと戯れながら10分ほど歩くと、左の木立の間から湖が見える。ここが島であることを忘れる風景だ。

【追記】
11月3日の夕方、また「島地の森散歩道」に行ってみると、ゲートはいつもの通り、閉まっていました。やっぱり、入ってはいけなかったのかなあ・・・。

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posted by Mr.G at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | よもやま話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする